アイス・ストーム

・The Ice Storm / Ang Lee / 1997米 (113min.)

ice storm=「着氷性悪天」「凍った雨をともなう暴風」だそうだ。
子役というには微妙な年頃のフッド家の子どもトビー・マグワイア(親の言うなり)とクリスティナ・リッチ(童顔にだまされてはいけない)、カーヴァー家の子どもイライジャ・ウッド(間が悪くて気の毒だ)、アダム・ハン・バード(将来が気がかり)がなまなましくて怖いくらい。大人の世界は言うに及ばず。家族が久しぶりに揃って感謝祭の食卓を囲むダイニングなど冬木立に囲まれたガラス張りだ。暖房されていることはわかっていても見るほうは寒いんだよう(監督は雪とも氷とも縁のない台湾出身だというのに映像がとことん寒々しい)。製氷皿から氷を取り出したりロックアイスを鷲掴みにしてグラスに放り込んだり、水溜りに足を突っ込んだり氷雨に打たれたり。カーヴァー夫人ジェイニー(シガーニー・ウィーバー)が不倫に走るのは(あのご主人では気持ちはわからないでもないが)心も満たされていないからだとわかるところだけが(ウォーターベッドの真ん中で胎児のように手足を縮めて眠るところだけは水、といっても)羊水のイメージで人肌。

嵐の翌朝、両家でひとり蚊帳の外の少年が列車から降りた時、揃って出迎た家族の姿を見てうっすら顔をほころばせる(もちろん何も知らないからこそだけど)。数時間前に死んだ隣の子の重みをまだ覚えているであろう父親がこらえきれず肩を震わせすすり泣くのも無理はないか、というなんともいえないいい表情だ。ただこの一家はこの子のおかげでわずかでも家族の絆を取り戻せるかもしれないが、家族を繋ぎとめるかなめを失ったカーヴァー家の行く末は?弟の心は?両家が隣同士の付き合いをこのまま続けていけるだろうか。同じアン・リー作品の『ウェディング・バンケット』をみても、息子はともかく父親の気持ちを思うと何もかもうまく収まりめでたしめでたしという結末は実際にはほとんどあり得ない、ということだ。

時代はニクソンが支持を失う1970年代前半、テレビ画面は(おそらく)「グリーン・ホーネット」、季節は感謝祭。つきものの七面鳥も小道具として威力を発揮、冷凍庫からごろん、と登場する様子は死体のよう。ローストが感謝祭の食卓で家長によりうやうやしく切り分けられるのだけど、やがてぎざぎざのきたない切り口をみせた大写し(親は子どもを置いてパーティーに行くので、残り物で済ませるる早めの夕食)。一家の見せかけと現実を見せつけられているようでなんだかなぁ。
[PR]

by drift_glass | 2007-04-07 07:20 | 観る  

<< United Kingdoms... 少年 >>