人気ブログランキング | 話題のタグを見る

不完全な死体

・ラリイ・ニーヴン「不完全な死体」 (創元SF文庫)
The Long Arm of Gil Hamilton
訳:冬川 亘

「快楽による死」 Death by Ecstasy(The Organleggers)
「不完全な死体」 The Defenseless Dead
「腕」 ARM

ニーヴン独自の歴史空間「ノウン・スペース」が舞台。国際連合警察ARM (Amalgamation of Regional Militia)の捜査官で、第三の「想像の腕」を持つ男ギル・ハミルトンが主人公のSFミステリ中編集。
死刑判決を受けた犯罪者は、病院で処刑されなくてはならない、またその際、外科医たちは可能な限り多くの部分を臓器銀行のために救わなければならない。
臓器を密売するギャング「オーガンレッガー」の存在も、現在では絵空事でなくなってきている。死刑囚の貴重な臓器は移植に利用されるが、常に備蓄臓器は不足しており死刑制度の枠がどんどん広げられた結果、犯罪抑止効果が高まり人々は犯罪の実行をやめてしまった……
そこで臓器密売人の暗躍。

ギル自身も事故で右腕を失っている。失意の日々を送るうちに彼は自分の「想像の右腕」が使えるようになっていたが、新しい腕を移植されてからもその目に見えない「第三の腕」は残った。その腕を使えば壁越しでも真空でも物を掴んだり持ち上げたりできるのだ。人の注意をひくためちょっとした芸当をしてみせたり、犯罪捜査や危機脱出の役に立ったりと、この「想像の手」が大活躍。

ところでギルが飲むスペシャルドリンク「コーヒー・グロッグ」。熱いミルクコーヒー+シナモン+ラム酒だそうだ。グロッギー(泥酔状態)はラム酒の水割り「グロッグ」から。18世紀、洋上での水分補給に積んでいたラム酒を水割りで兵士に支給した英国海軍エドワード・バーノン提督の仇名(グログラム生地の上着を着用していたことからOld Grogと呼ばれた)からとられたもの。ビタミンC不足による壊血病予防のため、この水割りラムにはのちに絞ったレモンが加えられましたとさ。

by drift_glass | 2007-05-07 21:34 | 読む  

<< Mike Keneally &... 親切な恋人 >>