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私のすべては一人の男

私のすべては一人の男_f0134076_13334188.jpg・ボアロー、ナルスジャック「私のすべては一人の男」(早川書房)
Et mon tout est un homme

事故で損傷した身体の一部を、提供者の遺志により移植された7人の男女。少しずつ異変が起こり始める。 移植された手足や臓器がもとの持ち主の特徴を示し出したのだ。

十字をきる右腕に「リュリュ」と彫られた刺青を見つけ当惑する司祭。 新しい足が気に入り、もう片方の足を移植された女性に求婚する男。 別人のような画風で注目を浴び始めた左利きの画家。
異変は徐々に彼らの精神をも蝕み始め……

語り手の「どんな些細なことも疎かにせず」記録したという報告書を注意深く読んでいれば、とても手の込んだミステリとしても楽しめる風変わりな作品。政府ぐるみのある計画に基づく人体実験に選ばれた7人の運命はともかく、1965年度黒いユーモア賞受賞作ということだけれど、ユーモアの方はそれほど伝わらなかった。おかしいことをまじめに書いていっそうおもしろい、という作品もあるので、訳者の方の(きまじめな)資質にもよるのかな。

by drift_glass | 2007-11-19 22:22 | 読む  

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