夢幻会社

f0134076_1163526.jpg・J・G・バラード「夢幻会社」 (1979)
The Unlimited Dream Company

創元SF文庫版訳者あとがきによると原題どおりに訳せば『限りない夢の仲間』であるが、原題の簡潔さをいかしたいために無限と夢幻をかけこのタイトルにしたとのこと。テクノロジー三部作の神の視点から一人称「おれ」の目線に変わる。
ブレイクは空を飛ぶ夢にとりつかれていた。ある日彼は、空港から一機のセスナを盗んで飛びたつが、そのセスナはロンドン郊外の田舎町シェパトンに、火だるまになって墜落してしまう。ブレイクは幸いにも住民の手で救出された。だがこの町から脱出することができずに過ごすうち、彼の周囲にはあいついで奇妙な出来事が起こりはじめた。そして、やがてこの閑静な町は、熱帯のジャングルと鳥たちの楽園に変貌してゆく……!(扉より)

If the doors of perception were cleansed every thing would appear to man as it is: infinite. For man has closed himself up, till he sees all things thru' narrow chinks of his cavern. (William Blake)

狂騒的な中盤から、それなりの報いを受け、その償いをし、すべてを与えつくし満ち足りた思いで静かな休息につこうとするブレイクの後姿を見送る。この作品は冒頭に物語の結末がきて、改めて主人公ブレイクの回想が始まるためわかっているはずなのだが、やはり彼のたどる数奇に満ちた濃密な一週間の経験ののち読者の味わう感慨は深い。過去のバラード作品の集大成と書かれているのも納得の、すばらしい物語だった。

移動中の車内や機内で読んでいる間はイメージのつかめなかった「バンヤン樹」、初めて見るその圧倒的な姿に目から鱗が落ちた気分。画像でご教示下さった翻訳者の増田まもるさん、ありがとうございました。

樹形は横に張り出し、枝から出る多数の気根は地面につくと幹のような支柱根になり、それぞれ木の幹となる。ベンガル菩提樹ともいい、インドでは長寿と豊穣のシンボルである神聖樹だそうだ。
[PR]

by drift_glass | 2008-02-14 21:00 | 読む  

<< 地下道 コンクリート・アイランド >>