竹沢タカ子 「潮風の子どもさ」

竹沢タカ子『潮風の子どもさ』(徳間書店)

雑誌「リュウ」に1981年から84年にかけて単発読みきり形式で掲載された「海棲人」シリーズ。
ヒトが陸棲人(という言葉は使われないが)と海棲人に分岐し(させられ)、今また海棲人が陸に「帰化」せざるを得なくなった背景を明らかにした「The Night」を描きおろしで追加。はるかな昔、陸の天変地異を避け管理階級トライアにより人為的につくられた二種類の海棲人ギュヨーとタサミ。世代を経て徐々に海への適応力が弱まる海棲人。ギュヨーの餌として作られたタサミには遺伝子の操作も少なく、まだ陸へ戻しても生きていける。再びタサミの陸への「帰化」。人工的な種の弱さ、遺伝子操作への警鐘とまでとらえてしまうのは少し穿ちすぎか。

ジャンルを問われればSF、それだけでもたいへんおもしろい作品なのだ。それ以上に海洋汚染や関西で育ったものなら道徳の副読本で必修の(必修だった、か)同和、在日韓国・朝鮮人問題がちょうど写真のネガとポジ(どちらがポジでどちらがネガ、ということはない)のように重なりあう。そんなこと意図してない、読者の勝手な思い込みだよと作者は笑うかもしれないが。

子どもを個人の所有でなく社会の宝として、血縁の有無にかかわらず海から迎え育む、陸へ帰化したタサミたち。海に棲めなくなりつつある仲間(親世代)を迎えるために、陸社会に同化し努力を重ね各分野で頭角をあらわし始める子どもたち。自然の、種族の声に耳を澄ませる少女ゆい。きっかけはなんでもいい。表紙のかわいいキャラクターにつられてたくさんの少年(少女)がこの作品を手に取り、その深い内容に気づいてくれていれば嬉しい。

コマの隅におおやちき、立原あゆみ、吾妻ひでお、青池保子などの見慣れたキャラクターがカメオ出演したり巻末にXTCがちらっと出たりと、おそらく同世代の作者の、もしくはアシスタントの趣味が垣間見えてまたなんとも。

竹沢タカ子の単行本はとても少ない。
・『ラストゲイル』(東京三世社マイコミックス)……「ザ・ホスピタル」は雑誌掲載時に読んでいましたよ。
・『ボイルス・タウンの狼男』(新書館ウイングスコミックス)……連載はどうみても打ち切りのようなかたちで終了し単行本は1・2巻刊行後未完のまま。作者の書きたいことと実際の読者層(編集部の意向)がかけ離れすぎていたのかもしれない。3巻に収録される予定だった終盤の掲載誌を一号ずつ探して読むだけの価値があると思った。まだ2冊しか読めないけどね。余談だがこの作品読む限り作者はBoston(のTom Schulz)の大ファンのはず。
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by drift_glass | 2008-08-04 09:20 | 読む  

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