カテゴリ:観る( 55 )

 

Alice, Sweet Alice

f0134076_17343772.jpg・『アリス・スイート・アリス』(Alice, Sweet Alice 1976米)
Communion
監督 Alfred Sole
If You Survive This Night... Nothing Will Scare You Again.

聖餐式に惨殺体で見つかった美少女カレン(ブルック・シールズ)を殺したのは一体誰?続いて姉妹の伯母が刺され、日頃の言動から12歳の姉アリスが疑われ精神病院に収容されるのだが……。
中古VHSのパッケージ解説に「ブルック・シールズの幻のデビュー作」と書いてあり、なんとなく買ってきたのだ。観ていてずっと心にひっかかっていたのがニコラス・ローグの『赤い影』、だって頻繁にフードつきの黄色いレインコート姿がうろちょろするんだから。
犯行の動機と小道具がすごいねぇ。少女も狂信者もあなどるべからず。

姉妹の住んでいるアパートの管理人アルフォンソというのが150キロはゆうにありそうなスキンヘッドの気味悪い巨漢で、クラシックが流れる室内で子猫たちと同居しているのだが、家賃を払いにきたアリスにちょっかいを出そうとするからあとで猛烈な仕返しをくらうのだ。昼寝の最中、太鼓腹の上にゴキブリを何匹も入れたガラス瓶を置かれ、目覚めたら悪夢が待ち構えていたという展開。
この俳優、Alphonso DeNobleといい、複数のゾンビ映画に出演している。
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by drift_glass | 2007-06-15 17:34 | 観る  

晩秋

先週末NHK BS-2で放映された『晩秋 (Dad)』(1989年米 Gary David Goldberg監督)を観る。放映のたび観逃していた作品でようやく録画できたのだ。原作は『バーディ』『クリスマスを贈ります』のウィリアム・ウォートン。仕事一筋で寡黙だが愛情あふれる父親、ジェイク役のジャック・レモンがすばらしい。

家族の絆と別れの予感が時おりユーモアをまじえて描かれ、しっかりものの妻を演じたオリンピア・デュカキスをはじめ、息子役テッド・ダンソン、孫役のまだ少年の面影を残したイーサン・ホーク、陽気な娘婿ケヴィン・スペイシーなど、脇役もそれぞれが主役を演じられる実力の持ち主ばかり。

老人介護、病気の告知、患者の生活の質(Quarity of Life)について考えさせられる部分が多く、とくに命にかかわる深刻な病状なら、誰(医者、家族)が告知するかまたどのタイミングで告知するか慎重に考えたい。ジェイクの二度の癌告知場面に(もちろん『晩秋』で恐怖心から一時的な心神喪失状態に陥るところはフィクションだが、十分ありうる事)、強くそう感じた。

病床から「もっとお前を抱いてやりたかった」と40代の息子に語りかけるジェイク、いくつになっても親は親、子は子だ。
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by drift_glass | 2007-05-29 18:06 | 観る  

白バラの祈り― ゾフィー・ショル最期の日々

・マルク・ローテムント監督『白バラの祈り ゾフィー・ショル最期の日々』(2005年独)
Sophie Scholl: die letzten Tage
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ドイツにおいて1942年夏から数度にわたり反ナチ、自由を呼びかけるビラを密かに配布してきた学生の抵抗組織「白バラ」。 1943年2月18日ミュンヒェン大学構内で兄と共に反政府的内容のビラを配布したかどで秘密警察に連行され、2月23日国家への反逆及び利敵行為に関し有罪、死刑判決、その日のうちにギロチンで斬首されたゾフィー・ショルに焦点をあてた作品。

ゾフィーが小さな窓に切り取られた空を見上げ、神に祈る姿が繰り返し映し出される。最初は自分のために、物的証拠が発見されてからは家族や友人の無事のために。せまりくる死への恐怖と闘いながら、最後は自分の良心に正直でいられるようにと祈る。

f0134076_22113792.jpg山下公子『ミュンヒェンの白いばら』(筑摩書房)によると、取調べにあたった捜査官や同房の政治囚、死刑が執行された収監先のシュターデルハイム刑務所員らがみな、ゾフィーたち3人の毅然とした態度にうたれたと述べている。
それから、処刑場へ行く番になった。
まず初めに女の子から。あの子はまつ毛一本ピクリともさせないで出て行った。
私達は皆、そんなことがあり得るなんて全然考えられなかった。死刑執行人は、あんな死に方をした人間を見たことがないと言っていた。(『ミュンヒェンの白いばら』p312-313)
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by drift_glass | 2007-04-16 19:11 | 観る  

影の私刑

・フランク・ロッダム監督『影の私刑』(1983)
The Lords of Discipline

パット・コンロイの原作をもとに『さらば青春の光』のフランク・ロッダムが60年代アメリカ南部(サウス・カロライナ州)の士官学校を舞台に撮った作品。 いやぁ、士官学校でも『愛と青春の旅立ち』とえらい違いだ。

「真の男」を送り出すという名目で、学校にふさわしくない新入生を特権的にしごき、執拗に苛め、退学に追い込む覆面の学生秘密組織「10」。最上級生の主人公は初の黒人新入生を「10」から守るよう恩師に頼まれる。ところが「10」の正体を暴こうとした主人公とルームメイトたちにも卑劣な罠が待ち構えていた……。

南部の人種差別とか覆面の秘密組織といえばまるでKKKみたいだけど、この私刑集団のリーダー的な存在は、苛め役がさまになっているマイケル・ビーン!でも確かターミネーターではよれよれになってたような。

どうしてこのビデオを観たんでしょう、それは(脇役だが)ミッチェル・リキテンシュタイン出演作だったからなのだ。豪邸でモーツァルトなど弾いてらっしゃいます。
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by drift_glass | 2007-04-11 23:21 | 観る  

オリエント急行殺人事件

・『オリエント急行殺人事件』(1974)

f0134076_11543288.jpgMurder on the Orient Express
シドニー・ルメット監督 /英/128min.
アガサ・クリスティーの有名な原作は既読だが実力ある豪華キャストだけに、アルバート・フィニーやローレン・バコールなど見ごたえ十分。

アンソニー・パーキンスの役どころがマザコンを思わせる青年で、どうしたってノーマン・ベイツを連想してしまう。夜中に二度も「ママ!」と彼が寝言を言うのを同じ寝台車に乗り合わせたポワロが聞いたと言うところで、絶対観客は笑うんだろうな。

髪の色に合わせた赤い衣装で颯爽と登場するヴァネッサ・レッドグレーヴの美しいこと。
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by drift_glass | 2007-04-07 11:03 | 観る  

まぼろしの市街戦

・まぼろしの市街戦 / フィリップ・ド・ブロカ監督(1967仏=伊) 103min. / DVD (KKDS-86)

f0134076_12595471.jpg仏語(原語)でも見られ、昭和49年テレビ放映時の日本語吹替(富山敬、広川太一郎他)までついているオリジナル版DVDがようやく出た。以前出ていた国内盤LDはオープニングの音声が消失し、アメリカで公開された短いヴァージョンの英語吹替版だったからこの映画が平和のシンボルを携えたアラン・ベイツの後姿で終わると思っている人は多い筈だが、オリジナル版の「最後の一瞥」まで見たらもう「おとぎ話」とはとても言えない。

精神病院から逃げ出した患者たちが思い思いの服装でおめかしするところ、特に「司祭」!夢みるように優雅な身のこなしには流れる音楽の効果もありいつも心が震える。
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by drift_glass | 2007-04-07 08:45 | 観る  

顔のない眼

・顔のない眼 / ジョルジュ・フランジュ監督(1960仏=伊) 90min. / DVD (IMBC-0188)
(原題 les yeux sans visage)

f0134076_12544582.jpg手術助手にアリダ・ヴァリ、というだけで十分怖そうだが、実際に見た映像の比ではなく、部屋に引き上げようとしていた下の子がひと目見るなりそのまま座り込んで最後まで見てしまうほどのインパクトだった。目の部分だけが生きた人間の眼になっているマネキンの顔を想像してみるといい。

「成功しても誰にも賞賛されない」
移植後の皮膚の異変、失敗の兆候に気づき「犬で満足するしかないのか」という、父親より皮膚移植の権威としての独り言。顔に大火傷を負った愛娘のため、という父の「仮面」に隠された本音こそがこの物語の真の恐ろしさではなかろうか。

かわいそうなかわいそうなクリスチアヌ。
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by drift_glass | 2007-04-07 08:45 | 観る  

おとなしいアメリカ人

・"The Quiet American" 北米盤DVD
オーディオコメンタリーを聞きながら見る(飽きないのよこれが)。
旧サイゴン(今はホーチミン市か)の古い建物は植民地時代のもので、窓も上げ下げでないフランス式両開き。監督と脚本家(クリストファー・ハンプトンは、以前同じグリーン原作ケイン主演の『名誉領事』の脚本も担当した)によるとファウラアは「愛するもの(恋人とヴェトナム)のために初めて'react'した」のだと。

f0134076_137313.jpgケインは演技者としてこう説明する。
「人は、特に我々イギリス人は、(怒りや悲しみなどを)努めて人前では見せまいとするものだ」……市民を巻き込んだ爆破テロとその惨状、現れたパイルがヴェトナム語を「ネイティヴのように」話している姿を目撃したファウラアが事務所に戻り、ヴェトナム人の部下と言葉をかわす場面。

配役については、70近いケイン(朝鮮戦争に行った時実際にインドシナに向かうフランス軍と遭遇したことがあるそうだ)の年齢だからこそ、ファウラアの行動の動機が単なる三角関係によるものではないというリアリティがあり、『サイダー・ハウス・ルール』でのアカデミー助演男優賞のヒューマニズムに溢れた受賞スピーチを聞いて決めたという。監督は1950年生まれ、オーストラリア出身。少年時代「ヴェトナムに行って共産主義者をやっつけるんだ」と思いこんでいた罪滅ぼしもこの映画にこめたそうだ。

【追記】国内版DVDタイトル『愛の落日』……なんだかちがう……
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by drift_glass | 2007-04-07 08:13 | 観る  

ゴールデンボーイ

f0134076_9545695.jpg・ブライアン・シンガー監督
『ゴールデンボーイ(Apt Pupil)』再見。
「焦げ臭い」
「ちょっと冷凍ディナーを焦がしてね」
うわぁぁネコちゃん、合掌。

シンガー監督のインタヴュー記事を読んだ。
ユダヤ人だそうだ。親戚に600万人もの同胞が第二次世界大戦で殺されたという話を聞いても他人事のようだったが、8歳の時紙にクレヨンで鉤十字を書いた腕章を母親に見せに行ったところ激しく動揺され、このマークがユダヤ人にどれほど強く、深く、個人的な意味を持つかということを思い知り、この経験が最高の教育になったという。

f0134076_955155.jpgドゥサンダーの正体を見破った隣のベッドの患者(腕の入墨で強制収容所から生還したユダヤ人とわかる)が取り乱して看護婦にしがみつく場面はシンガー監督自身の母親の姿とだぶらせているのかもしれないが、監督は映画化権を取った時に「おもしろくて怖い映画」にしようと決めたそうで、『シンドラーのリスト』のような作品でなくても、コメディであれどういうジャンルであれ人々に映画を見てもらって少なくとも「思い出す」機会をつくることに意義がある、とのこと。風化させてはいけない民族の歴史をこの人なりの方法で記録したのがこの映画なのかもしれない。

娯楽性といったら何だがブラッド・レンフロのシャワーシーンなど必要以上に色っぽく撮ってはいないか。自分の趣味ではないから別にいいけど。
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by drift_glass | 2007-04-07 08:11 | 観る  

Last Orders

・Last Orders / Fred Schepisi / 2001年英 / 109min. / DVD

引退したら海辺のバンガロウで過ごそう、という歌があったっけ(XTC-'Bungalow')……庶民のささやかな夢。

コックニーの肉屋ジャック(マイケル・ケイン)の遺灰を遺言に従いMargate Pierから海に撒くために出かける親友たち(ボブ・ホスキンス、トム・コートネイ・デヴィッド・ヘミングス)と息子(レイ・ウィンストン)の、車での道中。それだけの話だが、施設にいる娘ジューンを最期まで受け入れることができなかった(と妻は思っていた)ジャックをめぐる、それぞれの回想と秘密が交錯し、50年の歳月が重みを増す。息苦しくなりそうな話だが、だてに年をくっていない親父の集団だから(遺灰の)ジャックを交替で抱えて軽口を叩きあい、老体に鞭打ちながら登る坂道では太った男たちがあやうく脱落しかかるなど楽しい場面も。 "Bloody army!""Bloody navy!" "Bloody tourist!"

f0134076_13163695.jpg立ち寄ったカンタベリー大聖堂でトマス・ベケットのステンドグラスを見上げるボブ・ホスキンスの姿、ジャックとエイミー(ヘレン・ミレン)が出逢い、ジューンが宿り、自分の出生の秘密を知った農場にジャックの遺灰の一部を撒く「息子」(レイ・ウィンストン)、霧雨にけぶる堤防で遺灰の散った先を見つめる男たち、どの場面も印象的だが、せっかく起用したトム・コートネイ(葬儀屋-Mr. Rest In Peace)の見せ場がなくてコートネイのファンでもあるわたしにはとてももったいなく感じた。

ヘレン・ミレン姐さん登場の場面。赤いペンキで塗られた店から真っ赤なコートで登場し、(同色の)二階建バスに乗り込む場面で既に、ただのおばさんではないという激しさが暗示される。そしてジャックの一番古い親友であるレイ("Lucky"、エイミーにとっては"A little ray of sunshine")を演じたボブ・ホスキンスが『モナリザ』級(最大級ということ)!影の主役は彼かもしれない。そういえばホスキンスとミレンは"Long Good Friday"でも息の合ったコンビだったなぁ。

マイケル・ケインの「いつか自分の父親を演じる時が来ると思っていた」との言葉どおり、"Last Orders"は彼の父親が癌で亡くなった病院で撮影され、彼自身にも長年生き別れになっていた(重度の障害のある)兄がいる。 Peckhamにはケインの通ったWilson's Grammar Schoolがあり、イーストロンドンで育ったレイ・ウィンストンは『アルフィー』『長距離ランナーの孤独』で見た憧れの映画スターたちとの共演に興奮したと言う。

原作 『ラストオーダー』のヴィンス。
肉屋「ドッズとその息子」の店主ジャックとエイミー夫婦の養子、空襲で孤児になったところをエイミーに引き取られた赤ん坊だった。夫婦の実子ジューンは障害児で、50年間施設に預けられたまま。夫婦にとってジューンは「偶然(できちゃった子)」、自分は「選択」だったが、ヴィンスはふたりが本当に欲しかったのはかわいくて健康な女の子だということを知っている。休日のドライブに一緒に連れて行く貧しい親友の娘サリーを、決まって自分たち(運転席と助手席)の間に座らせるからだ。彼が頑なに「ドッズとその息子」を継ごうとしないのは、ジャックに見捨てられたジューンのため。
「ヴィンスのアネキ、頭はタマネギ」
ジューンなんて姉さんなもんか。ぼくに姉さんなんていやしない。
そして確かにその人はおれの姉さんなんかじゃなかったけれど、おれはその人のため、その人のぶん、ますます強くひっぱたいた。その人は自分じゃひっぱたくことができないから、その人のかわりにひっぱたいてやったんだ。おれも前は、つまりジューンのことを全然知らなかったころは、だれかの代わりに人をひっぱたくということはなくて、ただひっぱたいていただけだったが。(p132)

この作品にはひとりひとりの心の奥に秘めた小さくて深い思いやりや、誰にもいえない悲しみがほんとうに巧みに配置されている。だから再読・再見を繰り返してしまうのだ。
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by drift_glass | 2007-04-07 07:53 | 観る