カテゴリ:読む( 182 )

 

ゲイルズバーグの春を愛す

f0134076_8553320.jpg・ジャック・フィニイ「ゲイルズバーグの春を愛す」
I Love Galesburg in the Springtime

表題作を再読。
gale's burg 「そよ風の街」

ゲイルズバーグの街を愛してやまない人たち同様、ゲイルズバーグの街を愛してやまない過去がいる。物語の結びは、目にも鮮やかな赤い車体が読者の心を捉えていつまでも離さない。
警察では、その車の完全なまでの特徴を教えてくれたから、発見はさほど困難ではないと思っているのである。だがそれによると、その車は(p39)

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by drift_glass | 2008-10-05 23:15 | 読む  

竹沢タカ子 「潮風の子どもさ」

竹沢タカ子『潮風の子どもさ』(徳間書店)

雑誌「リュウ」に1981年から84年にかけて単発読みきり形式で掲載された「海棲人」シリーズ。
ヒトが陸棲人(という言葉は使われないが)と海棲人に分岐し(させられ)、今また海棲人が陸に「帰化」せざるを得なくなった背景を明らかにした「The Night」を描きおろしで追加。はるかな昔、陸の天変地異を避け管理階級トライアにより人為的につくられた二種類の海棲人ギュヨーとタサミ。世代を経て徐々に海への適応力が弱まる海棲人。ギュヨーの餌として作られたタサミには遺伝子の操作も少なく、まだ陸へ戻しても生きていける。再びタサミの陸への「帰化」。人工的な種の弱さ、遺伝子操作への警鐘とまでとらえてしまうのは少し穿ちすぎか。

ジャンルを問われればSF、それだけでもたいへんおもしろい作品なのだ。それ以上に海洋汚染や関西で育ったものなら道徳の副読本で必修の(必修だった、か)同和、在日韓国・朝鮮人問題がちょうど写真のネガとポジ(どちらがポジでどちらがネガ、ということはない)のように重なりあう。そんなこと意図してない、読者の勝手な思い込みだよと作者は笑うかもしれないが。

子どもを個人の所有でなく社会の宝として、血縁の有無にかかわらず海から迎え育む、陸へ帰化したタサミたち。海に棲めなくなりつつある仲間(親世代)を迎えるために、陸社会に同化し努力を重ね各分野で頭角をあらわし始める子どもたち。自然の、種族の声に耳を澄ませる少女ゆい。きっかけはなんでもいい。表紙のかわいいキャラクターにつられてたくさんの少年(少女)がこの作品を手に取り、その深い内容に気づいてくれていれば嬉しい。

コマの隅におおやちき、立原あゆみ、吾妻ひでお、青池保子などの見慣れたキャラクターがカメオ出演したり巻末にXTCがちらっと出たりと、おそらく同世代の作者の、もしくはアシスタントの趣味が垣間見えてまたなんとも。

竹沢タカ子の単行本はとても少ない。
・『ラストゲイル』(東京三世社マイコミックス)……「ザ・ホスピタル」は雑誌掲載時に読んでいましたよ。
・『ボイルス・タウンの狼男』(新書館ウイングスコミックス)……連載はどうみても打ち切りのようなかたちで終了し単行本は1・2巻刊行後未完のまま。作者の書きたいことと実際の読者層(編集部の意向)がかけ離れすぎていたのかもしれない。3巻に収録される予定だった終盤の掲載誌を一号ずつ探して読むだけの価値があると思った。まだ2冊しか読めないけどね。余談だがこの作品読む限り作者はBoston(のTom Schulz)の大ファンのはず。
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by drift_glass | 2008-08-04 09:20 | 読む  

エドガー・パングボーン「良き隣人」

Good Neighbors (伊藤典夫訳)

『宇宙人SF傑作選 天使の卵』表題作の作者、パングボーンのショートショートをOさんに勧めていただいた。
手持ちのアンソロジーに収録されていたので早速読んでみたところ、奇妙な味のファーストコンタクトもの好きな自分の好みにぴったり。
翼の端から端まで六キロの巨大な生きものの正体は?
あっ、いけません。
タイムズスクエア上空でそんな大きな怪物を撃ち落しちゃ……!
翌日、過失を認めた宇宙船から詫び状と賠償金がパラシュートで投下された。
地球の言語と被災地で通用するドル札で、という彼ら精一杯の誠意が感動的だ。
そして現在、“5ドル”の文字が逆さまの賠償金が一般に公開されている、という。

最初のスケールの大きさと結末の脱力感との落差に大笑い。
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by drift_glass | 2008-07-24 14:02 | 読む  

トーキングヘッズ叢書(2) J・G・バラード

f0134076_7353830.jpgトーキングヘッズ叢書(2) J・G・バラード(書苑新社)

増田まもる 「永遠の現在」へのパスポート
山形浩生 未来系セックス『クラッシュ』
永田弘太郎 失われたフィクションを求めて
本橋牛乳 エイズ時代のバラード
虚青裕 車がなけりゃできない
鈴木たかし すべての幻想は上海に始まる
THE VOICES OF JGB
独断的JGB読書案内
J・G・バラード年代順作品リスト
J・G・バラード単行本別作品リスト
J・G・バラード二次資料リスト
バラードの履歴書
STUDIO VOICEには何ができなかったか
夢幻会社純正・精神薄弱者のための残虐遊戯グッズ
バラードの67冊

そうそうたる執筆陣。
1994年の刊行なのでリストなど資料としては古い部分もあるが、紙媒体としてたいへんよくまとまっていてありがたい一冊。当時邦訳が待たれていた短編集の"Myths of the Near Future(近未来の神話)"はいまだに出ていないらしい。表題作はS-Fマガジン1983/2(村上博基訳)とユリイカ1986/6(増田まもる訳)で訳出されているそうだが、S-Fマガジンのバックナンバーのほうは家のどこかにしまいこまれていないかなぁ。

「近未来の神話」だけで検索すると、イギリスのバンドKlaxonsのデヴューアルバムばかり引っかかってまぎらわしい鬱陶しい。
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by drift_glass | 2008-06-18 22:02 | 読む  

フランス軍中尉の女

読み始めた本:
・ジョン・ファウルズ「フランス軍中尉の女(The French Lieutenant's Woman)」

映画のほうも未見のままなのが幸いか。表紙のメリル・ストリープの表情からうっとうしそうな物語だと勝手に決めつけて、それが今まで読まずにいた理由なのだが、人物の描写にウォーやアンガス・ウィルソンのようなじわじわっとしたおもしろみ(滋味)がある。もったいない積読にようやく読むきっかけを作って下さったNさんには感謝である。

Nさんおっしゃるところのジョン・ラスキンはオックスフォードで「あの」ルイス・キャロルと交友があったというから(ぼそぼそ)。
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by drift_glass | 2008-03-12 23:30 | 読む  

金星の住人

・アルベルト・モラヴィア「金星の住人」
アンソロジー『イタリア式恋愛』(角川文庫)所収。 SFじゃないよ。
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by drift_glass | 2008-03-10 23:34 | 読む  

甦る旋律

f0134076_23201225.jpgフレデリック・ダール「甦る旋律」

フランス冒険小説大賞受賞作。情熱的な冒険譚はやっぱりラテン系の土地でなければ。さくさく読め、さすがフランス恋愛サスペンスものだと感心しながら往復の車中で読了。バルセロナ、若い画家、ヴァイオリンを持っていた記憶喪失の女性。一気に読めたが「!」ばかりのテンションの高い会話はくたびれる。女性はヴァイオリンを弾くうち失われた記憶を取り戻しかけるのだが、画家が本人以上に過去に固執し(忘れてしまったほうがいい記憶だってあるだろうに)、単独でフランスへ戻りついに彼女の過去に辿り着く。追っ手に彼女を渡すくらいならいっそ、と画家は思い切った行動に出て、あげく読者に残されたのは深い無力感。
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by drift_glass | 2008-03-06 23:40 | 読む  

乙一 Calling You/失はれる物語/傷

「Calling You」
「失はれる物語」
「傷」

乙一の短編集『失はれる物語』から拾い読み。

基本はホラーになるのだろうが、どの話も『バグダッド・カフェ』に流れた物憂げな歌声のようにたんたんと優しい。

ただどれも「どこかで読んだことがある」ような気がして心をあまり動かされないのだ。
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by drift_glass | 2008-03-06 23:03 | 読む  

わが子は殺人者

パトリック・クエンティン「わが子は殺人者 (My Son, the Murderer)」(1954)
こんどのことは、ビルの試練であると同時に、私の試練でもあるのだ。私の生涯は、これまでのところ、みじめな失敗の連続だった。私は夫として失敗だった。父親としても失敗だった。ある意味では、ロニイ・シェルドンの友人としても失敗だったのだ。こんどこそ、もう二度と失敗をくりかえすことはできない。(p186)

時に暴走するダイハードな父性愛。
「パズル」シリーズの主役であるピーター&アイリスのダルース夫婦とトラント警部は脇役にまわり、この作品はピーターの兄で出版会社の副社長をしているジェークと息子ビルとの関係を中心に展開する物語。明るいダルース夫婦も僧侶のようなトラント警部も好きなキャラクターである上に、この話にはもうひとつ「イギリス人作家と糟糠の妻、美しい娘、作家のパトロンの伯爵令嬢」という味つけが効いている。イギリスの糟糠の妻は、鶏小屋の卵を売り家計を支えていたのだけど。
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by drift_glass | 2008-03-05 23:41 | 読む  

ロザリンド・アッシュ「蛾」

大学で教えているという語り手の所有するレコードに、コール・ポーターとともにテンペランス・セヴンの名が。The Temperance Seven の演奏する姿はスティーヴンソン「箱ちがい」を映画化した作品"The Wrong Box"で観られ、これがまたThe Bonzo Dog Bandの先輩みたいな楽しいものなのだ。

幽霊譚というより運命の女の話か。それにひきよせられる男たちも蛾、うすぎぬをまとった女も蛾、文中にも「繭」とか「虫」とか……
おもしろかったが「家」そのものにもっと魔性を感じられたらよかったのに。
まるい円を描きながら、恐らく私は一年の出来事を魔法の輪で囲み、絶縁して無害なものにしたかったのである。それから私はそうした出来事を一つ一つ、異国の蛾かなんぞのようにページにピンでとめるつもりだった。しかし出発点にはもちろん戻れない。中心が変って、くるりとまわしてもってきた線がすれ違いになる。(p8)

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by drift_glass | 2008-03-03 23:46 | 読む