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魔性の犬

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・クエンティン・クリスプ『魔性の犬』(ハヤカワ文庫FT46)
CHOG
訳:望月 二郎、舟木 裕

ルイス・キャロルの項で少し調べた「かばん語」、この長編の原題"CHOG"も、主人公の生い立ちから察するにCHILDとDOGをあわせた「かばん語」のようだ。また読んで字のごとくサノバビッチ、いや母親は娼婦に違いないが「オス犬の息子」だから違うのか。

注文の行き違いで2冊入手したため、1冊は探求中の方に。あれはダブリで出るような本ではないのですが、と驚いておられた。10ccの日本独自のボックスセットも探求中の方にお譲りした後また中古屋で見つけたことがあるので、「ダブリの神様」がたまに憑いてくれるのかもしれない。神様のおかげであるからありがたく自分用に確保した。

クエンティン・クリスプ(Quentin Crisp)については映像出演作『オルランド』『ブライド』、StingのPV "Englishman in New York"で興味をもち調べたことがあったが、小説を読むのは初めてだ。
1908年のクリスマスにロンドンの郊外で生まれ、ダービーシャーの学校を卒業、国立廃兵院のあるロンドン郊外の町チェルシーに37年間住んだ後、木々もたわわに“ヤク”のなるというアメリカに幸せを求めて移り住んだとある。(訳者あとがき)
1968年に出版した自伝『裸の公僕 The Naked Civil Servant』のテレビ化で広く名を知られるとのことだが、VHSリリースもされたジョン・ハート主演のこのドラマ、一度観てみたい。
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by drift_glass | 2007-06-30 12:32 | 読む  

夜の冒険者たち

f0134076_10352677.jpg・ジャック・フィニイ「夜の冒険者たち」
The Night People
訳:山田 順子
装幀:和田 誠

たとえば映画「卒業」だったらあんなことやってのけた二人でもその後長続きするかしらんとまあ余計なお世話ですが、この冒険者たちは今後これっぽっちも後悔しないだろうな。

サンフランシスコとゴールデンゲートブリッジで結ばれたノースベイは高級住宅地でここから通勤している主人公たちは(男たちは弁護士だし)それなりのステイタスの持ち主なんだな。アメリカ人読者なら説明の必要もないんだろうけど。

夜の冒険者が夜の冒険者「たち」を呼びしだいに大胆になり警官に目をつけられてうまく逃げおおせた、と安心したら思わぬところでしっぽをつかまれてしまう。逃走する前に、自分たちがここに存在したという証を残すため深夜のゴールデンゲートブリッジのケーブルをのぼるリュウとハリー。下で見守るジョーとシャーリー。いったい何をするつもりだろう、メッセージでも書き残すのかそれとも何かを盗み出すのか?私の想像力などその程度で、彼らのやってのけたことがわかった瞬間、そのスケールにはフィニイにまんまとしてやられた!刻みつけるのはモノとは限らなかったね。

すごいね、こんなみずみずしい感性を持ち続けて60代での発表作。
Hats off to Jack Finney.
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by drift_glass | 2007-06-29 10:36 | 読む  

嬉しさも中くらいなり

読みたい本の8割が絶版という都合上、古書店、本来は店頭派だが必ずしも探求本が見つかるとは限らないのでオンライン古書店やヤフオク、amazonマーケットプレイスのお世話になることが多い。
先日マーケットプレイスで破格値での出品本を見つけ、迷わず注文した。受注メールも届いてほっとしていたところ、すぐ出品者より注文キャンセルとお詫び、返金のメール。値段の入力を間違えて出品してしまったとのこと。ちなみに他の出品者からの3冊は16,000円以上とマーケットプレイスによくある人の足もとを見てつけたとしか思えない値段なので、1/3以下の良心的な価格に喜んでいた私の気持ちはみるみる萎えしぼむ。

「今回の件は残念です。適正価格で購入できると思った私が甘かったと諦めます。」
と返信後、メール文面は丁寧で誠実そうだったので出品者への評価入力は5段階中の4をつけておいた。注文キャンセルに5はさすがにつけられなかったのだ。

まだ読む本がたくさんあるしそのうち安値で出品されるかもしれないと諦めがついた半日後、件の出品者より再びメール。実は同じ本で状態のよいものが入荷したため店長が先の出品分を値下げしていた、それを知らず入力担当の自分のミスと早とちりしてしまった、同じ値段で再出品しますという申し出だった。なんだかできすぎた話だ。本当にもう一冊入荷したんだろうか?本当は……

欲しかった本なのでもちろん再注文したが、もし、自分があんな捨て台詞を吐かなければ出品者側もこの値段で売らなくても済んだかもしれない。
自分が悪質クレーマーになり下がった気がして悶々としていたのだった。
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by drift_glass | 2007-06-17 00:34 | 日常  

Shriekback "Cormorant"

f0134076_14594670.jpgShriekback "Cormorant" CD (2005)
malicious Damage Records(MD605)

1. Ronny
2. Sea Theory
3. Waterbaby
4. Huytfi Dbl Plus
5. The Strongest Wind That Blows
6. Load The Boat
7. Troublemeat
8. Reason With The Beast
9. Bonehead
10. Voiled Karletus
11. True Passage
12. Il Mystera Del Tempo

all songs written by Barry Andrews
except 1 & 2 with Martyn Barker and 12 with Carlo Asciutti.

Barry Andrews率いるShriekbackが2005年に発表した10枚目のアルバムで、父 Bill Andrews (1923-2004)に捧げられている。cormonantとは水鳥の鵜(ウ)のことで、ジャケットは海面すれすれを飛ぶ鵜の遠景写真。アルバム全体の音像は、だいたいアートワークのとおり。

XTCのAndy Partrdigeが潮騒とカモメの鳴き声から始まる2と7,8にギターで参加している。
7でのエッジの効いたギターは特に嬉しい。

4.のHuytfiはBarryの造語?

12.イタリア語で「時の神秘」、ヴォーカルはゲストミュージシャンのCarlo Asciutti。
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by drift_glass | 2007-06-16 15:31 | 聴く  

Alice, Sweet Alice

f0134076_17343772.jpg・『アリス・スイート・アリス』(Alice, Sweet Alice 1976米)
Communion
監督 Alfred Sole
If You Survive This Night... Nothing Will Scare You Again.

聖餐式に惨殺体で見つかった美少女カレン(ブルック・シールズ)を殺したのは一体誰?続いて姉妹の伯母が刺され、日頃の言動から12歳の姉アリスが疑われ精神病院に収容されるのだが……。
中古VHSのパッケージ解説に「ブルック・シールズの幻のデビュー作」と書いてあり、なんとなく買ってきたのだ。観ていてずっと心にひっかかっていたのがニコラス・ローグの『赤い影』、だって頻繁にフードつきの黄色いレインコート姿がうろちょろするんだから。
犯行の動機と小道具がすごいねぇ。少女も狂信者もあなどるべからず。

姉妹の住んでいるアパートの管理人アルフォンソというのが150キロはゆうにありそうなスキンヘッドの気味悪い巨漢で、クラシックが流れる室内で子猫たちと同居しているのだが、家賃を払いにきたアリスにちょっかいを出そうとするからあとで猛烈な仕返しをくらうのだ。昼寝の最中、太鼓腹の上にゴキブリを何匹も入れたガラス瓶を置かれ、目覚めたら悪夢が待ち構えていたという展開。
この俳優、Alphonso DeNobleといい、複数のゾンビ映画に出演している。
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by drift_glass | 2007-06-15 17:34 | 観る  

ミュータント兄弟

・フリッツ・ライバー「ミュータント兄弟」
Mutant's Brother
訳:深町 眞理子

赤ん坊の時に孤児院からそれぞれ別の家庭に引き取られた一卵性双生児、ジョンとグリア。廉直な養父母に育てられ幸せな家庭を築いているグリアのもとに、一通の電報が届いた。
生き別れの兄ジョンからのものだ。すぐきてくれ、たのむという文面を読み、グリアは翌日兄の住むスティールトン、デーモン・プレースへ飛んだ……

同じ能力をもつ者同士の戦いに勝つ方法は?
というと先日の「千日手」の状況に似ているが、血を分けた兄、この世で唯一の同類を失うか自分が倒されるかの選択はつらいものだなぁ。
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by drift_glass | 2007-06-15 17:21 | 読む  

Fool's Mate

f0134076_1840038.jpg・ロバート・シェクリイ「千日手」
Fool's Mate
訳:稲葉明雄
どんな手を打とうと、先に行動を起した側が負けるのだ!だがこのままの対峙が続けば、地球宇宙船団の敗北も必至なのだ!
CPC(陣形確率計算機)は、離陸隊形においてすでに敵艦隊が優位を占めているという答えをはじき出した。双方が高度なCPCを用いてのろのろと陣形を変えながら、もう2年間になる膠着状態に発狂する乗組員が相次いだ。残った射撃手はたった一人。最後の一人、射撃盤のボタンの配色の美しさに目を奪われたニールスン中尉も、指を組み合わせボタンを押したい誘惑と懸命に戦い続けている……

fool's mateはチェス用語で「愚者の詰み」、最短手数、序盤数手でのチェックメイトのこと。千日手とは同一局面が何度も現れるパペチュアル(perpetual)で、3回現れた場合は引き分け(draw by triple repetition)。
用語本来の意味と、意表をついた(文字通りの)打開策をかけたブラックユーモア、原題が秀逸。読後のカタルシスが大きく、ああすっきりした。
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by drift_glass | 2007-06-12 22:30 | 読む  

古書店主の嘆き

車で通り過ぎるたびに気になっていた古書店に入ってみる。
入口が横向きについており今まで外から店内を窺うことができず、初めてみる店内の整然と並んだ平凡社の東洋文庫や思想本、評論の数々に圧倒された。海外文学はどのへんか尋ねると、NHKラジオを聞いていたカウンターの店主がふん、という感じで「翻訳ものはここ10年ほど欲しいと思う本が出てこなくてウチにもほとんど置いていないんですよ」から始まり、しまいにはカウンターから出てきて横で絡ま……もとい、世間話とも愚痴ともつかないお話を延々聞かされるはめになった。

電子辞書のせいで辞書が売れなくなり広辞苑などの改訂ももうないだろう、とか、最近の学生は本も読まずインターネットとニュース番組さえ見ていれば世間を知った気になり、これではオ○ム信者のように一元的な情報しか得られず受身なだけ、思考力がつかない、日本人はどんどんバカになる、15年前には日に50人から来たお客さんも最近は1日に2~3人がせいぜい(私は2人目だそうだ)、名古屋には大宅壮一文庫のように文化的なものは何もない、もう店をたたむことを考えている……云々。

1冊(500円)だけ購入して帰ってきたが、評論にも哲学書にも経済書にも見向きもしない客ですみませんすみません。
・ジュディス・メリル『SFに何ができるか』(晶文社)
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by drift_glass | 2007-06-09 21:30 | 日常  

エッフェル塔の潜水夫

・カミ「エッフェル塔の潜水夫」

帰りの電車と帰宅後で1週間がかり。め一杯広げた風呂敷をたためるのか心配していたが、すごい!お釣りがくるほどおもしろかった。アメリカ娘とフランス青年とオランダ幽霊船長の三角関係に、欲深なイギリス鉄道王や怪しい霊媒が絡む。セーヌ河身投げ死体消失とエッフェル塔で首を吊った潜水夫の謎は?

グルメの太っちょ、モンパパの大阪弁がいい味を出している。モンパパ、太りすぎを悩んでドイツの高名な医師の指示を仰ぎトカゲ食事療法も試してみたのだ。大阪弁がこなれていると思ったら、訳者は滋賀県出身で大学は京都。(厳密には滋賀弁・京都弁と大阪弁は違うのだが)まったくの付け焼刃ではないわけだ。

「あんたトカゲおあがりになったことおますかいな?」
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by drift_glass | 2007-06-08 07:51 | 読む  

Flying Dutchman

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Maintaining a fine tradition the Flying Dutchman" - KLM Royal Dutch Airlines
「空飛ぶオランダ人」の異名を持つサッカー選手ヨハン・クライフ、最近はジョニー・デップ主演の『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズで知られるフライング・ダッチマン。 Englishman, Dutchmanといえばイギリス船、オランダ船という意味もあるとのこと、さすが海運国。

16~17世紀の造船技術の発達で、当時のオランダ船はとても速かったそうな。かのロシアのピョートル大帝も在位中に偽名で(当たり前だが)職工として自らオランダの造船所に潜入したんだそうで、産業スパイの先駆者だったのだな。

きのう読み終えたカミの『エッフェル塔の潜水夫』が下敷きにした伝説「彷徨えるオランダ人」。 嵐の夜に神様に毒づいた罰として、この世と煉獄の間をさまようことになったオランダ人船長率いる幽霊船が喜望峰でたびたび目撃される…… これをもとにしたハイネの詩をワーグナーが「彷徨えるオランダ人 "Der fliegende Holländer"」というオペラにしている「そうだ(観たことがないから)」。
チケットぴあ 新国立劇場オペラ公演紹介より:
貞節を捧げる女性が現れるまで永遠に海を彷徨い続けなければならない呪いを受けたオランダ人船長が乗る幽霊船がノルウェーのある港町に錨をおろす。7年に1度だけ許されている上陸の機会に、オランダ人船長はノルウェー船の船長ダーラントの娘ゼンタと出会う(後略)
全然関係ないけど「フライング・ダッコチャン Flying Ducko-chang Records 」という和久井光司氏のレーベルがありました。
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by drift_glass | 2007-06-06 22:30 | 日常