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フレンチ警視最初の事件

『フレンチ警視最初の事件 (Silence for the Murderer)』(1948)読了。

このフランクという狡猾な金髪の二枚目は、名香智子(フランシス・アイルズことアントニイ・バークリーの「レディに捧げる殺人物語」も漫画化していた)あたりの作品に登場しそうな男だな。
どこの国の政府もやっていることだし、どこの国の法律も許している。大金持ちからすこし取って、そいつを貧乏人に与えるってことは。これはすっかり確立された原則で、だれも異議を申し立てることはできないんだ。

事件にいたるまでの登場人物の係わり合い方やものの考え方、葛藤がとても丁寧。訳文や用語が古くても気にしない、どころかこの翻訳はとても好きだ。

フレンチ警視(それまでのシリーズでは警部だったんだよね)は文字通り地道、地べたを這いずりまわっての根気強い捜査の末に真実を発見するのだけど、一方では霊感や偶然に助けられての事件解決ものも、フィクションならではの楽しみと思えば嫌いじゃない。
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by drift_glass | 2007-10-25 01:07 | 読む  

ロドルフと拳銃

ノエル・カレフ「ロドルフと拳銃」

幼いロドルフと二人の男(一人は殺人者、ひとりはやもめの刑事)との関係にハラハラしたりほのぼのとしたり。カレフはあの『死刑台のエレベーター』の原作者。

中盤、ロドルフが殺人者から逃げているうち迷い込んだ閉館後のルーヴルで、「ママがお風呂に入るときのようにタオルを腰にまいて、とっても美しかった」ミロのヴィーナスや「首のない女性とその翼」(サモトラケのニケだ!)を初めて見て口をあんぐりさせてしまうところなど、文字だけなのに本当に映画みたいだ。
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by drift_glass | 2007-10-20 22:09 | 読む  

The Lake

f0134076_8424210.jpgThe Lake
by Edgar Allan Poe
In youth's spring, it was my lot
To haunt of the wide earth a spot
The which I could not love the less;
So lovely was the loneliness
Of a wild lake, with black rock bound.
And the tall pines that tower'd around.
But when the night had thrown her pall
Upon that spot — as upon all,
And the wind would pass me by
In its stilly melody,
My infant spirit would awake
To the terror of the lone lake.
Yet that terror was not fright —
But a tremulous delight,
And a feeling undefin'd,
Springing from a darken'd mind.
Death was in that poison'd wave
And in its gulf a fitting grave
For him who thence could solace bring
To his dark imagining;
Whose wild'ring thought could even make
An Eden of that dim lake.

Edgar Allan Poe (1809-1849) の詩にAntonyが曲をつけた "The Lake"をMySpaceで聴き、アルバムには収録されていないシングルのみのリリースだったため、すぐ入手した。ジャケットのポートレイトは"I Am a Bird Now"と同じPeter Hujar撮影のCandy Darlingだが、こちらはHujarの作品の管理者より特別に使用を許可された未発表の写真だそうだ。病みやつれた顔にフルメイクを施したCandy Darlingの焦点の定まらないまなざし。撮影の時、彼女は一体何を思いまた何を見ていたのだろう。

萩尾望都が「エドガー」という類まれなるキャラクターと共に『ポーの一族』の物語を紡ぎ、内田善美がリデルに「黄金郷<エル・ドラド>」を暗誦させ、Peter Hammillが「アッシャー家の崩壊」をロック・オペラで甦らせたポーの作品は詩にも小説にも不思議な、という言葉では物足りない異様な魅力と、死の匂いに満ちている。
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by drift_glass | 2007-10-20 08:50 | 聴く  

つき

・ルイ・C・トーマ「つき」
『フランス・ミステリ傑作選(1) 街中の男』所収

アパートの管理人フェルナンはラジオをつける。
住人のベルノン氏のおつかいのついでに、自分の分とあわせ2枚の宝くじを買っていたのだ。
アナウンサーが読み上げた100万フランの当選番号はベルノン氏に渡した券のほう、かっとなりラジオを叩き壊すフェルナン!しかしベルノン氏は届けた券を見るでもなく、部屋に置いたまま出かけたことを思い出した。
「あの人は午前さまになるってあんたに言ったのね?」
妻が預かっている合鍵を出してきた……

1958年の作品らしくまだ「ラジオ番組」だ。
ルイ・C・トーマのサスペンス長編『悪魔のようなあなた』は1967年にジュリアン・デュヴィヴィエ監督(これが遺作となった)、アラン・ドロン主演で映画化されている。
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by drift_glass | 2007-10-17 14:06 | 読む