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冬の夜ひとりの旅人が

・イタロ・カルヴィーノ『冬の夜ひとりの旅人が』(ちくま文庫)
あなたはイタロ・カルヴィーノの新しい小説『冬の夜ひとりの旅人が』を読み始めようとしている。

本を読む人間のあらゆる行動と心理状態がくどくどと事細かに解説されてからようやく『男性読者』が本を読み始めたと思えば、最初の16ページ分が繰り返して製本されているではないか。彼は書店で、実は二重の製本ミスによりポーランド作家の小説がカルヴィーノの本の表紙に綴じこまれてしまったものと知り、その『マルボルクの村の外へ』のほうと交換してもらったのだが、(そういえば筒井康隆の『私説博物誌』がこういう、ページの端が裁断-仕上げ裁ち-されていない、昔ながらの化粧裁ちという製本だった)
ナイフを一閃、あなたは本の扉と第一章の最初のページの間を切り開く。すると……(p49)

するとわたし(これを書いているわたし)は今イタロ・カルヴィーノの『冬の夜ひとりの旅人が』という本に登場する『男性読者』が『冬の夜ひとりの旅人が』と交換してきたポーランド作家タツィオ・バザクバルの、続きを期待した話とは何の関係もない『マルボルクの村の外へ』の冒頭を、『男性読者』と一緒に読んでいるのだった。

by drift_glass | 2007-04-07 07:46 | 読む  

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