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プリズマティカ

・サミュエル・R・ディレィニー「プリズマティカ」
Prismactica
訳:浅倉久志
「きみがポケットに詰めこめるだけの真珠と、片手で運べるだけの黄金と、もう一つの手で持ちあげられるだけのダイヤと、真鍮の鍋で井戸からすくいあげられるだけのエメラルドと―これだけのものとひきかえに、手をかしてもらえないか?」
「で、何を手伝えばいいんだい」
「宝を捜すのだ!偉大で年老いた怖しい魔法使いによって三つに割られた鏡の中にある、幸福という名の宝を」

鮮やかな色に頭痛をおこすという灰色男は話し方までワンパターンで(読者にはそこがかえっておもしろいのだが)、彼が「一番身近で大切な友だち」と呼んでいるものが、なぜ厳重に錠を下ろしたトランクに閉じ込められているのだろう?その正体は?もちろん、それが外に出ていると、彼にとって都合の悪いもの。
灰色男のもっとも幸福な瞬間とは、この世からあらゆる色彩が失われる時なのでは?

「この人びとは、彼らが出会う人間を片っぱしからだまし、そしてこの世界の色彩ゆたかなものをなに一つ楽しむことができない」
子どもには、イマジネーションで読む絵本であり、大人には寓話であり。
「虹をつかむ男」のジェイムズ・サーバー(1894~1961)に捧げられた作品。史上最小のピンチ・ヒッター(こびとだからストライクゾーンが厳しいね)が登場する「消えたピンチ・ヒッター」を野球小説アンソロジー『12人の指名打者』(文春文庫)で読んだっけ。

プリズムは漢字で「三稜鏡」と書く。ふつう波長の違いを利用した分光(色分解)に使われる正三角柱のものが連想されるが、直角二等辺三角柱(直角プリズム)、五角柱(ペンタプリズム)のものもあるそうだ。

by drift_glass | 2007-04-26 16:34 | 読む  

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